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 「近畿のイケテル商店街」レポート3

最終更新日:平成28年3月7日

古都の商店街を流れるそうめんで賑わいづくり【奈良市下御門町間商店街協同組合】(奈良県奈良市)

訪問日:平成28年1月15日
担当AD:加治 武史

ますは「下御門商店街の名前を知ってもらう」

街並み 奈良市下御門町商店街は、近鉄奈良駅の東、東向商店街・もちいどのセンター街を抜けたところに位置し、その先には「ならまち」が続くロケーションの商店街です。古くは近隣商店街と共に興福寺の境内にあり門前町として栄えた歴史ある商店街で、最近の「ならまち」ブームで再び注目を集め、下御門を含む近鉄奈良駅周辺には国内外から観光客が訪れています。
 下御門商店街の店舗数は28店。和菓子、結納飾り、時計眼鏡などの物販をはじめ、奈良の地酒やお寿司などが楽しめる飲食店等で構成されており、地域住民と長いお付き合いを重ねてきた商店街です。このように地域に根ざした商店街ではありますが、商店主の高齢化に伴いお客様も高齢化の傾向にあり、駅隣接という好立地から周辺人口が増加しているものの、なかなか新しい顧客を取り込めていないという現実がありました。そこに問題意識を抱いた下御門商店街は、臼井理事長を中心として検討を重ね、まずは商店街を訪れていない人に「下御門商店街の名前を知ってもらう」ことが必要であるとの思いから、商店街の情報発信に向けて取り組むこととなりました。

 

イベントとSNSで知名度アップ、来街者数もアップ!

流しそうめん 下御門商店街は南に向かってなだらかな坂道となっています。その傾斜とアーケードがある強みを活かして、2012年夏、商店街の端から端まで全長80mの「流しそうめん」イベントを実施しました。奈良名産の三輪そうめん1300束を用意し、午後2時と4時の2回に分けて行ったところ、開始時間になると瞬く間に長蛇の列。青竹を半分に切ったそうめん台に、真っ白なそうめんが目にも鮮やかに流れると、待ち構えていた大勢の人たちから歓声が上がります。気がつけば涼を求める親子連れや、流しそうめんを見るのは初めてという観光客など800人近い人が集まり、「こんなに人がいてるん、はじめて見たわ!」と商店街の人たちも驚くほどのイベントとなりました。
 この流しそうめんイベントはその後も毎年夏に開催され、「そうめん早食い大会」など新しい企画も盛り込んだ結果、なんと2000人近い人を集める大イベントに成長し、古都奈良の新しい夏の風物詩となりました。
 この成果はイベント当日にとどまらず、年間を通じて下御門商店街を訪れる人の数は増えています。27年度の来街者は対前年度比21.5%増と大幅に伸び、商店街には賑わいが戻ってきました。昔ながらのお客様に加え、東京などの都市部から奈良に移り住んできたこだわりを持つシニア層など新たなお客様が商店街を訪れることも増えてきました。
 これほどの成功をおさめた勝因はどこにあるのでしょう?その答えの一つは、組合幹部と若手商店主との役割分担による相乗効果ではないでしょうか。流しそうめんイベントを振り返ると、ベテランと若手がそれぞれの強みを活かしたチームプレーが見えてくるのです。
 そうめん台の青竹を竹山から切り出し、商店街に運び入れ、半分に切ってそうめん台を設置したのは、臼井理事長の声がけで集まったシニアボランティア仲間。当日の運営はベテランから若手まで商店街メンバー全員で担い、流しそうめんに集まった大勢の人たちに薬味とつゆを配り、心を込めたおもてなしをするのは婦人部の皆さん。その模様は、若手商店主により組合のホームページやフェイスブックなどで次々とアップされ、商店街の盛り上がりが臨場感たっぷりに伝わってきます。ホームページやフェイスブックを見て集まった参加者の中には、普段は商店街に足を運ばない若い世代も多かったのではないでしょうか。これに加えて、マスコミへの周知は理事長のネットワークを活用。地元奈良市の協力を得て、記者クラブ経由でマスコミに周知したところ、新聞各紙に掲載され、より幅広い層に情報を届けることができました。まさに、商店街の課題となっていた「情報発信」がイベントを契機に幅広い顧客層へ効果的に行われているのです。

 

商店街の明日を託す。後継者育成のために

会長夫妻 下御門商店街でも、多くの商店街が抱える悩み「後継者問題」が課題となっています。下御門商店街に魅力を感じて出店する若手商店主もあり、近隣の「もちいどの商店街」内にあるインキュベーション施設『夢CUBE』出身者が下御門商店街でカフェを開くなどの好循環も生まれていますが、歴史ある商店街の明日を担うのは容易ではありません。
 これまで15年の長きにわたり下御門商店街の要となっている臼井理事長に伺ったところ、「商店街活動は『農耕型』。ここで肥やしをまいて耕す覚悟が必要」と語っておられました。若手商店主たちがじっくりと商売を重ね、商店主同士の信頼関係を築きながら地域に根付いていくことが必要であると。その道のりは容易ではありませんが、臼井理事長は、若手商店主たちがイベント運営や情報発信など様々な商店街活動に参画する中で、地道に下御門商店街に根を張り、商店街の明日を託す後継者として成長してくれると期待しています。

シカだけちゃうぞ そんな臼井理事長の熱い期待に応え、若手商店主も積極的に商店街活動に取り組んでいます。奈良・下御門商店街の魅力がつまったフリーペーパー『しもみかど帖』は、夢CUBE出身の若手商店主が中心となって制作しました。個店の魅力を写真と商店主のコメントで綴るほか、商店街の歴史を伝える「しもみかど昔話」など、どこかノスタルジックな紙面に興味をそそられます。地元奈良での配布のほか、東京でも配布され、全国に下御門商店街の魅力を伝えています。
 さらに翌年、写真展「写真でつづるしもみかど商店街」を実施。『シカだけちゃうで、サカもある。奈良、坂のある商店街の写真展』と銘打ち、地元の大学と写真家の協力を得て、商店街の魅力を写真と言葉で伝える展覧会を商店街内で開催しました。そのコンテンツは、国の支援策を活用して「Newしもみかど帖」として冊子にまとめられ、下御門商店街の情報発信に大いに貢献しています。
 商店街の明日を担う後継者たちは、こうした日々の取り組みにより、下御門の地に根を張り成長を続けています。

 

要因分析
要因分析票(PDF:97.53KB)PDFリンク 新しいウィンドウで開きます

 

商店街データ

 商店街名:奈良市下御門商店街協同組合

 所在地:奈良市下御門町25(理事長店舗)

 担当者:理事長 臼井 基雄

 連絡先:0742-22-3387

 

 

このページに関するお問い合わせ先

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